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目次
「心」が分かるとモノが売れる レビュー
エステーといえば消臭力のCM、というくらい知名度が高い同CMを手掛けた鹿毛康司氏の著書です。
モノ、商品が売れないのはお客様の「心」が分かっていないから、もっとお客様の「心」を分かるためにはどうすればいいのか。
マーケティング施策で困っている担当者、商品が売れずに困っている経営者、自営業者の方にとっては参考となる部分が多々ある、とても面白い本でした。
第1章 マーケティングとは「心」である
本書はまず、マーケティングの基本原則である、
「4P理論」
「STP分析」
の限界から始まります。
「4P理論」は
- Product(製品)
- Price(価格)
- Place(流通)
- Promotion(販売促進)
の4つの頭文字を取って名付けられています。
「STP分析」は、
- Segmentationka(どのような属性の顧客がいるのか)
- Targeting(どのような顧客をターゲットにするのか)
- Positioning(どんな価値を認識させるべきか)
の3つの頭文字を取って名付けられています。
普段のお仕事で、4P理論やSTP分析を使われている方も多いと思います。
しかし、今のマーケティングには限界がでてくる。
リアルなお客様、生身の存在としてのお客様をとらえることができない、ということに触れられています。
今、注目されているのは「インサイト」
インサイトは、マーケティングの世界では、
「人を動かす隠れた心理」
「無意識に行動にかり立てる心理」
という使われ方をし、米グーグルの求人広告や、本屋大賞といった事例が続きます。
インサイトを明らかにすることは難しい、覚悟が必要、といったことにも触れられています。
未曽有の危機を乗り切る「心」のマーケティング
学習塾を事例として、子供たちや親御さんの「心のツボ」を見つけるにはどうすればいいか、といったことが書かれています。
子供たちの心を動かす心のツボにアクセスするために最初にやることは、「子供だった自分に聞く」こと。
大切なことは、ネガティブな思いに向き合うこと。
思い出したくないような記憶の底に封じこめてあるような「嫌なこと」の奥底に何かが横たわっている。
そして変わる状況に合わせて、刺激する心のツボも変えていくことの重要性が書かれています。
第3章 マーケティング調査のバイアスが本当の「心」を隠す
マーケティング調査を超えて、お客様のインサイトを見つけるにはどうすれば良いのか?
回答者の思い込みがもたらすバイアスの罠。
どうしてこのお店を選んだのですか?ということを深掘りしていくと、当初の答えとは違う理由が明らかになってくる、という事例が書かれています。
聞き方によって得られる回答が大きく変わってくることがある。
また「状況」が思わぬバイアスを生むことがある、といった事例も書かれています。
第4章 自分の「心」に潜り、一流の消費者を目指そう
インサイトを見つける際、忘れてはいけないのが「人の行動の95%は無意識に支配されている」ということ。
自分の行動を振り返り、無意識の行動をあぶりだしていくことがトレーニングになります。
いろいろな場面で行動を振り返ってみると、自分自身の矛盾した行動をたくさん発見することができます。
買いたいと思っていたものではないものを買った場合、それはなぜなのか。
早く寝ないと明日の仕事に支障がでるのに、なぜ寝ないでスマホゲームをするのか。
本書には、「心」をどう理解していくか、ということが角度を変えて様々な事例とともに掲載されています。
自分のインサイトも分からないのに、他社のインサイトを理解するのは無理な話、とも書かれています。
ぜひ日々に少しの時間を取って、自分のインサイトを理解するトレーニングをしたいと思いました。
いろいろな行動の矛盾を見つけられそうです。
行動経済学の本も、再び読もうかなといった気持ちにもなってきますね。
第5章 モノは「機能」だけではなく、「心」で買われる
エステーの消臭プラグ、ムシューダ、米唐番などを例として取り上げながら、お客様の「心」に訴えかけるCM作りのポイントを紹介しています。
読むと、
「なるほど!」
と思わされるのですよね。
後半は赤毛のアンミュージカルを題材として、運営側からお客様側に視点を切り替えて見えるものを教えてくれています。
「心」が分かるとモノが売れる レビュー まとめ
後半はエステーでのCMの代表作である消臭力について紙面を多く割かれており、西川氏との関係性などとても興味深く読むことができます。
企業CMといえど、いかに「心」を大切にして制作をしてきたのか、といったことが伝わる内容でとても面白いです。
ぜひご一読をおすすめします。